聖書には、救い主イエスの誕生に至るまでの、この世での系図が出てきます。が、記された名前をたどっていくと中にはとんでもない人も名を連ねているのです。
☆さばきつかさが治めていたころ、この地にききんがあった。(ルツ 1:1)
さばきつかさ=士師がイスラエルの民を治めていた時代(BC1200–1000頃)に、大きな飢饉がありました。ベツレヘムに住んでいたエリメレクは、食物を求め、妻のナオミと二人の息子を連れて、死海の対岸のモアブに移り住みました。モアブ人は、ユダヤ民族の父アブラハムの甥ロトの子孫ですから、民族的にはユダヤ人と親類関係と言えますが、異教に染まり、偶像礼拝をしていました。神さまからは「交わるな」と命令されている、ユダヤ人にとっては“呪われた民族”です。エリメレクも、飢饉が終わるまで、しばらくの間だけだ…と思って行ったのでしょう。しかし飢饉が長引いたか、結局十年も居着いてしまいました。
その命令違反に対して神さまがお怒りになったためかどうかはわかりませんが、エリメレクはベツレヘムに戻れずに、モアブの地で死んでしまいました。あとにナオミと、二人の息子マフロンとキルヨンが残されました。ところがモアブで成長した息子たちは、なんと交わってはいけないはずのモアブの女と結婚してしまったのです。そのことにも神さまはお怒りになったのでしょうか、マフロンとキルヨンも、嫁をおいて次々に亡くなってしまいました。
当時、夫を失った妻たちには貧しい暮らしが待ち受けているだけでした。ナオミは、神に与えられた土地を離れて呪われた地に移り住んだ自分たちを、神が罰せられたのだと思ったようです。飢饉なんだからしようがないのに…という気もしますが、そもそもその飢饉も、ユダヤの民が神に背を向けたために、神さまが“天を閉ざされた”結果。やはり人間が自力で画策するより、神さまにすべておゆだねして歩んでいくことが大事なのでしょう。
☆あなたの民は私の民、あなたの神は私の神です。(ルツ 1:16)
未亡人となったナオミは、祖国の飢饉が去ったという話を耳にし、異郷の地でよそものとして暮らすのをやめ、ベツレヘムに戻る決心をします。同じく未亡人となった二人の嫁も連れて出発しました。が、途中まで来た所で、ナオミは嫁たちに言いました。「あなたがたは国に帰りなさい」… 確かにこれでは今度は嫁たちが異国で苦労することになります。そういう思いやり深い姑と暮らしてきた嫁たちも、その思いに応える優しい人たちでした。いいえ!私たちも一緒にあなたの国に行きます!と、二人はわんわん泣いてナオミにすがりつきました。
ナオミはなんとか嫁たちをなだめて帰らせようとしました。やがて弟息子の方の嫁オルパは姑の言うことを聞き、来た道を泣きながら引き返して行きました。でも、兄息子の嫁ルツは聞きません。
わたしはあなたの行かれる所へ行き、
またあなたの宿られる所に宿ります。
あなたの民はわたしの民、あなたの神はわたしの神です。(口語訳聖書 ルツ 1:16)
あなたの死なれる所で私も死にたい!…もしも私があなたから離れるようなことがあったら、主が私を罰してくださるように!… この告白が、ルツを「モアブの娘」から「イスラエルの娘」に変えました。彼女はやがてイエスの系図に登場することになるのです。しかしそんなことをその時は知る由もなく、ナオミとルツはベツレヘムに帰って行きました。
参考
立川福音自由教会 高橋秀典師礼拝メッセージ@2017.7.23
ぬりえ
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