(7) 士師記④「怪力サムソン」

12人の士師の中でも、一番有名なのはこの人でしょう。映画にもなったほどです。ただ、映画的には面白いキャラですが、士師としては良い仕事をしたとは言えませんね。

☆その子は胎内にいるときから神へのナジル人である…(士師記 13:5)

サムソンはナジル人[1]として生まれ、育てられました。ナジルとは、国や民族の名ではなく、“神の仕事をするために選ばれた人”という意味です。ナジル人には、いくつか守らなくてはいけない決まりがありました。酒を飲んではならない。死体にさわってはならない。そしてもう一つ、髪を切ってはならない。サムソンはおそらく、長い髪を編んで垂らしていたと思われます。特に彼は神さまからものすごい怪力を与えられていたのですが、髪を切ってしまったらその力は失われる、と知っていたからです。

ただ彼は、その他の決まりをちっとも守っていませんでした。怪力を持て余して動物を殺す(=死体にふれている)。美人に弱く、しかも“気に入ったから”と言って、外国人、つまり異教徒の女とでも結婚する。確かにかなりの数の敵を倒してはいますが、国のためというより、腹が立った!とか、仕返しだ!とか、もう自分のためばっかりです。

☆サムソンは主に呼ばわって言った。(士師記 16:28)

その頃のイスラエルは、侵略してきたペリシテ人に支配されていました。サムソンの力は、ペリシテ人からイスラエルを救い出すために与えられたものなのに…。サムソンはまたもや、ペリシテ人のデリラという女と暮らしていました。デリラはサムソンに聞いてきます。「あなたの弱点て何なの?」と、何度も何度も。のらりくらりとかわしていたサムソンでしたが、とうとう白状してしまうのです。「髪を切られると弱くなっちゃうんだ…」

デリラは彼を眠らせると、そっと仲間を呼び入れ、彼の髪を切り落とさせました。敵の襲撃に目をさましたサムソンは対抗しようとしましたが、時すでに遅し。神の力は離れ去っていました。捕えられた彼は、目をえぐられ、足かせをかけられて、牢に閉じ込められてしまったのでした。

そうしてやっと彼は、神さまのことを思い出したのかもしれません。捕えられて月日がたち、ある日彼は、ペリシテ人たちの祝宴に引っぱり出されました。そこは、彼らの神の神殿で、ペリシテ人たちはサムソンを笑い者にしようとしたのです。サムソンはおかしな踊りなどをして見せ、敵を油断させました。そして次の瞬間、巨大神殿を支える二本の柱を両腕で抱えたかと思うと、神に祈ったのです。

サムソン
サムソンは最期に神の名を呼んだ

サムソンは主に呼ばわって言った、
「ああ、主なる神よ、どうぞ、わたしを覚えてください。
ああ、神よ、どうぞもう一度、わたしを強くして、…」

(口語訳聖書 士師記 16:28)

彼の髪はまた伸びてきていました。渾身の力をこめて柱を倒したサムソンは、神殿中にいた何千人のペリシテ人を道づれに、崩れ落ちる神殿の下敷きになっていきました。

聖書の登場人物の中でも、身体的な強さで言えば、サムソンはナンバーワンでしょう。しかしそれだけの腕力も、神さまから離れてしまうと、うまく使えなくなりました。私たち一人一人も、それぞれ神さまから特別な能力をいただいています。それは、神さまとつながっている時にこそ最大のパワーをを発揮し、人を助けるため、この世を変えるために、役立たせることができるのです。

参考

[1] ヘブル語の「ナジル」は“分離” “聖別”の意。ナジル人(びと)に関する規定は、旧約聖書「民数記」の6:1–21に記されています。
立川福音自由教会 高橋秀典師礼拝メッセージ@2017.6.4

ぬりえ

シェアする