(8) ルツ記②「ボアズとルツ」

飢饉から逃れて“呪われた民族の地”モアブに移り住んだナオミの一家。しかし、夫も二人の息子も死んでしまい、ナオミは嫁ルツとともにベツレヘムに帰って来ました。

☆「きょう、私はボアズという名の人の所で働きました」(ルツ 2:19)

map-エルサレム・ベツレヘム・モアブ
モアブは死海の東側

「まあ、ナオミじゃないの!」町の人々は皆わいわいと集まって来てくれましたが、みじめな帰郷にナオミは本当にがっくりしていました。ルツはそれを見て、自分ががんばらなきゃ!と思ったのでしょう。誰かの畑で落ち穂を拾わせてもらってきますと言って、出かけて行きました。麦の刈り入れの時、刈った穂がパラパラとこぼれるのを、貧しい人たちに拾わせてあげなさい…と律法に書いてあるのです(レビ 19:9–10)。姑と自分の食料調達をしに行ったのですね。

ルツはある畑に行くと、世話人に頼み込み、朝早くからせっせと落ち穂を拾い集めました。ユダヤ人にしてみれば口もききたくないモアブの娘。それが、追い出されるでもなくいじめられるでもなく、むしろその働きぶりに驚かれている様子がうかがえます。よほど気だての良い働き者だったのでしょう。その姿を遠くから見て感心している男がいました。畑の持ち主ボアズです。ボアズはナオミが異教の地から連れて来た嫁が、正しい神を信じ、姑に尽くしている話を知っていました。それがあの娘です…と聞くと、彼はルツを守ってやりました。落ち穂をたくさん拾わせるようにと世話人に耳打ちし、昼食もたっぷり食べさせてやりました。

ボアズとルツ
信仰深く 働き者のルツを ボアズは好ましく思った

家に戻って来たルツが大量の麦を持っているのを見て、ナオミはびっくり。「いったいどこでこんなに…!」。ルツは答えました。「ボアズという方の畑で。」 ええっ、その方は私たちの近い親戚よ! 良かった、外国人のあなたがいじめられずにすんで…。

☆こうしてボアズはルツをめとり、彼女は彼の妻となった。(ルツ 4:13)

ボアズは、刈り入れが終わるまで、ルツを自分の畑で働かせてくれました。ナオミは、ルツがボアズと結婚できれば幸せになれるだろうと考えました。きれいに着飾ってボアズのもとに行くようにとしたくしてやると、ルツは姑に言われたとおりに出かけます。ボアズはやって来たルツを見て驚きましたが、ナオミの願いを知り、何とかそれに応えようと手立てを考え始めました。[1]

イスラエルでは、自分の土地というものが大切に考えられていました。ナオミが夫から受け継いだ土地を貧しさのために売ったとしても、親戚が買い戻してあげる決まりになっているのです。本当はボアズよりもっと近い親戚がいたのですが、ボアズはきちんと手順を踏んで、自分が買い戻してあげられるようにしました。買い戻しをした人は、残された妻(この場合はルツ)と結婚もするのです。それらは、買い戻す人にとっては大きな負担になる[2]ことでしたが、ボアズはやりとげました。ルツを愛していたのでしょうね。

ボアズとルツは結婚し、やがて男の子が生まれました。近所の女たちは皆ナオミを祝福し、その子に名付けます。

近所の女たちは… その名をオベデと呼んだ。
彼はダビデの父であるエッサイの父となった。

(口語訳聖書 ルツ 4:17)

ユダヤ人にとっては敵であったはずの国のルツが、ダビデ王の曾祖母、つまりこの世でのイエスさまの先祖となったのです。このあと千年ほどして、イエスさまがお生まれになりました。悪魔に売り渡してしまった私たち一人一人の魂を、買い戻してくださるために。

参考

[1] 聖書の記述では、ナオミがルツに指示したのは「(今夜)あなたはからだを洗って、油を塗り、晴れ着をまとい、打ち場に下って行きなさい。しかし、あの方の食事が終わるまで、気づかれないようにしなさい。あの方が寝るとき、その寝る所を見届けてから入って行き、その足のところをまくって、そこに寝なさい。」(ルツ 3:3–4)です。いくら未亡人とは言え、若い娘にとってこれはなかなか勇気の要ることです。姦淫の危険性も、拒絶される可能性もあります。もしも誰かに見とがめられたら、自分の立場が危うくなります(実際にこの時ボアズは、人に見つからないよう配慮してやって、ルツを帰宅させています)。ボアズに拒否された上、目撃されてしまったら、「次の買い戻し権利者」の心証も悪くなり、万事休すでしょう。それでもルツはナオミに対し、「私におっしゃることはみないたします。」(ルツ 3:5)と答え、「しゅうとめが命じたすべてのことをした」(ルツ 3:6)とあります。自分自身が玉の輿を狙っていたわけではなく、姑の暮らしを何とか成り立たせたいと願っての行動だったと思われます。このケースでは、ボアズとルツが結婚するということは、ルツがナオミの元を離れて嫁ぐわけではなく、“ボアズがナオミの土地とその相続人を絶やさないようにすること”だからです。
ナオミも、ボアズならきっとすべてを察知して、うまく対応してくれると信じていたふしがあります。ルツに、ボアズの寝床まで行けば、「あの方はあなたのすべきことを教えてくれましょう。」(ルツ 3:4)と言っています。事実ボアズは姦淫などに走らず、買い戻しの手順についてルツに教えています。ナオミはまた、帰ってきたルツに「あの方は、きょう、そのこと(買い戻しの件)を決めてしまわなければ、落ち着かないでしょうから。」(ルツ 3:18)と告げています。ボアズのルツへの思いも充分わかっていたのでしょうね。

[2] 「買い戻し」は“権利”と書かれていますが、買い戻す人にとっては得になるものではありませんでした。自分の金を使って、誰かの土地を買い戻してやり、後継ぎを生むために結婚したとしても、ルツ記の例で言えば、ルツが生む子は「エリメレク(ナオミの亡夫)の土地の相続人」です。なので、ボアズよりも近い親戚、一番の買い戻しの権利を有していた人は、この話を断っています。理由は「私自身の相続地を損なうかもしれないし…」です。“自分の土地を損なう”リスクはボアズにもあったでしょうに、彼はよほどの土地持ちだったか…。何より、ルツへの愛が勝(まさ)ったのだと思います。

立川福音自由教会 高橋秀典師礼拝メッセージ@2006.7.17

ぬりえ

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