(83) よみがえり

さて、イエスをお墓におさめたのはアリマタヤのヨセフとニコデモでしたが、その様子をずっと見守っていた者がいました。イエスにつき従っていた女性たちです。

☆あの方はよみがえられました。ここにはおられません。(マルコ 16:6)

見守りながら、女性たちはお墓の場所をしっかりと頭に入れていたのでしょう。安息日が明けるのももどかしく、朝早くイエスのお墓に向かいました。何人かで行ったようですが、全員女性。しかもそのうちの少なくとも2人は、イエスの弟子たちのお母さん。若くはなかったはず…。大あわてで埋葬したイエスさまのお体に、ていねいに香油を塗ってさしあげたいという思いだけでとにかくやって来たものの、あのお墓の入り口の石… 誰か動かしてくれるかしら… と心配しいしい話し合っていました。

The Empty Tomb
[1]「The Empty Tomb(1889)」Mikhail Nesterov[2]

ところが墓に着いてみると、入り口の石はすでに御使いによって転がされているではありませんか。二人の御使いは、入り口の石の上や墓の中に座っています。それを見た番兵たちは腰を抜かしていました。女性たちも恐ろしさに震えていると、御使いが言いました。十字架につけられたイエスはよみがえられました… ここにはおられません… あなたがたより先にガリラヤに行かれるので、そこでお会いできます… 弟子たちにそう伝えなさい…

本当に主のお体がない…! そうだった、確かに主は「よみがえる」と何度も言ってらしたけど…。それともやっぱり主のお体は盗まれたのかしら!? 彼女たちは、恐ろしいのかうれしいのかもわからないまま、かけ戻って行きました。そして弟子たちが隠れている所へ行って報告しました。

☆彼らは、…聞いても信じなかった。(マルコ16:11)

この時女性たちは、誰もがまさに混乱していたようです。報告の内容にもその混乱が現れていたのかもしれません。この場面の記述は四福音書で時系列や目撃した顔ぶれ、御使いの人数や座った位置などが少しずつ違っています。ただ共通しているのが「主のお体がなかった」「よみがえられたと聞いた」…
パニック状態の報告を聞いても、弟子たちは「何をバカなことを」くらいにしか思わず、信じませんでした。しかしペテロとヨハネだけは墓に走りました。中を確認すると、主のお体を包んだ布は、頭と胴体の位置に残っています。まるで中身だけが消え去ったように。それを見ても、彼らはまだ「よみがえり」がよくわかりませんでした。

女性たちのうち、マグダラのマリア[3]だけはまた墓の前に来て泣いていたようです。その時彼女に声をかける者がありました。「なぜ泣いているのですか」… 振り向くとそれは… イエスさま!! すがりつくマリアに主は言われます。

Christ's Appearance to Mary Magdalene after the Resurrection
[1]「Christ’s Appearance to Mary Magdalene after the Resurrection(1835)」Alexander Ivanov[2]

「わたしの兄弟たちの所に行って、
『わたしは、わたしの父またあなたがたの父であって、
わたしの神またあなたがたの神であられるかたのみもとへ上って行く』
と、彼らに伝えなさい」。

(口語訳聖書 ヨハネ 20:17)

イエスのよみがえりをまず知らされたのは、自分たちの危険も顧みずイエスのそばを離れなかった女たちでした。そしてよみがえりのイエスが彼女たちに託されたのは、何よりもやはり弟子たちへの伝言だったのです。主を見捨てて逃げ去った彼らを「兄弟」と呼んで。追っ手におびえ、主を裏切ってしまったことに打ちのめされている弟子たちは、このあと劇的に変わっていくことになります。

参考

[1] 「聖画を用いる」

[2] 「キリストの復活」を描いた画家たち
「Jesus Appears to the Holy Women(1886–1894)」James Tissot
「Disciples Running(1898)」Eugène Burnand 他多数

[3] マグダラとはガリラヤ湖西岸の漁師町の名で、マグダラのマリアは“その町の女マリア”という意味です。彼女は創作物などでやたらとフィーチュアされる傾向にありますが、聖書の中ではこのよみがえりの記事の時にしか登場しません。「罪深い女」のようなイメージで描かれがちですが、聖書にはそういった記述は全くありません。ルカ8:2には「悪霊や病気を治してもらった女たち、すなわち、七つの悪霊を追い出してもらったマグダラの女と呼ばれるマリア、…」とありますから、いくつもの病気を抱えてつらい人生を送っていた女性かと推測されます。
立川福音自由教会 高橋秀典師礼拝メッセージ@2017.7.16

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