(81) エリ、エリ、レマ、サバクタニ

十字架刑は見せしめのための刑です。はりつけにされたイエスと二人の死刑囚を大勢の見物人が取り囲みました。見物人は、あざけったり、ののしったりしていました。

☆あなたは今日、わたしとともにパラダイスにいます。(ルカ 23:43)

つい数日前には「主よ! ダビデの子よ!」と大歓迎していた人々が、なんだよ 革命起こしてローマ帝国から解放してくれるんじゃなかったのか!?…と、一転イエスを罵倒します。神殿をこわして三日で建て直すんだったよな〜、そんなら十字架からだって降りられるよな! 律法学者や祭司長たちも一緒になってせせら笑っています。 他人はさんざん救って来た救い主様が、自分のことは救えない! 神の子なのに、神に救ってはもらえないのか!

Christ on the Cross with the Two Maries and St John(十字架上のキリストと2人のマリアと聖ヨハネ)
[1]「Christ on the Cross with the Two Maries and St John(1588)」El Greco[2]
しかしイエスは彼らのあざけりに対し何も言わず、黙っておられました。ただ足元で泣いている母マリヤを、弟子の中で一人だけ刑場に来ていたヨハネに託しました。今日から、そこにいるヨハネがあなたの息子ですよ…

そしてもう一つ、驚くべきことばを残しておられます。一緒にはりつけにされた死刑囚の一人が、救い主なら俺たちを救え!とイエスをののしっていました。ところが、もう一人がそれをたしなめ始めたのです。俺たちにこの刑罰は当然の報いだ…だがこの方は違う…。イエスさま、御国の座に着かれたら、私を思い出してください…。イエスは彼に答えられました。「あなたは今日、わたしとともにパラダイスにいます」

彼は信仰深いことなど何一つしてこないような人生だったのでしょう。はりつけにされた今からでは、良いことなどそれこそ何もできません。それでもパラダイスに迎え入れられました。「悔い改め」の重さ、それがどれほど神さまに喜ばれるものなのかを、人間は知るべきですね(エゼキエル 33:11)。

Christ and the Good Thief(キリストと強盗)
「Christ and the Good Thief(1566)」Titian(Tiziano Vecellio)[3]

☆神殿の幕が上から下まで真っ二つに裂けた。(マルコ 15:38)

三人がはりつけにされてから3時間。真昼間の12時というのに不思議なことが起こりました。あたりが真っ暗になったのです。日食ではありません。イエスが「その日には太陽が暗くなる」と告げておられたことが実現したのです。その闇は3時間続き、午後3時。突然、イエスが大声で叫ばれました。「エリ、エリ、レマ、サバクタニ!」…わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか!…詩篇22篇のことばでした。これは、神の御子が全人類の罪を背負い、代わりにさばかれた、“本当に神に見捨てられた”ということを意味していました。

それからイエスはもうひとこと叫ばれたとあります。

「父よ、わたしの霊をみ手にゆだねます」

(口語訳聖書 ルカ 23:46)

そして「完了した。」とおっしゃって、“霊をお渡しになった”(ヨハネ19:30)。イエスさまは十字架に“つけられた”のではなく、実は“自らついてくださった”。“殺された”のではなく、“自ら霊を差し出された”のでした。

この時、大地が揺れ、神殿の幕が真二つに裂けました。人が神に近づくことができるようになったのです。そのしるしに、その場にいた見物人たちの態度が一変しました。皆がこのできごとを泣き悲しんだのです。ローマ兵たちでさえ神を讃えました。この方は本当に神の子だった…と。

参考

立川福音自由教会 高橋秀典師礼拝メッセージ@2013.3.17
立川福音自由教会 高橋秀典師礼拝メッセージ@2013.3.24

[1] 「聖画を用いる」

[2] 「十字架上のキリストとマリアとヨハネ」を描いた画家たち
「Christ on the Cross with the Virgin and Saint John(1435)」Jan van Eyck
「Christ on the Cross with Mary and John(1515–1516)」Albrecht Altdorfer 他

[3] 「キリストと強盗」を描いた画家たち
「Christ Crucified with the Good Thief(17世紀前半)」Francesco Allegrini
「Christ and the robber(1893)」Nikolai Nikolaevich Ge 他

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