イエスは弟子たちを連れ、イスラエル各地方を勢力的に宣教してまわられました。どこに行っても押し寄せる大群衆をいやし、教えることが、弟子の訓練にもなりました。
☆主よ。…彼らを焼き滅ぼしましょうか。(ルカ 9:54)
その時は、地元のガリラヤを発ち、首都エルサレムに向かっていらしたようです。途中のサマリヤ地方で、一行の泊まる準備をさせるため、イエスは使いを出されました。ところがサマリヤ人たちは、彼らを拒絶したのです。このことに、弟子のヤコブとヨハネが激怒しました。もともとこの二人は、イエスに「雷の子」と呼ばれるほど、短気でケンカっ早い兄弟です。言うことも荒っぽい。「主よ! 天から火を呼び下して、彼らを焼き滅ぼしましょうっ!」
彼らがここまで憤るのにも、理由がありました。昔、北イスラエル王国がアッシリヤに滅ぼされた時、アッシリヤが異教徒をサマリヤに植民させたため、その地方の人々は民族的にも宗教的にも、異教と混じってしまったのです。サマリヤ人は、ユダヤ人にとって唯一の聖地であるエルサレム神殿に対抗し、自分たちで独自の神殿を作りました。この時点でユダヤ人とサマリヤ人は決裂してしまい、言わば仇同士となっていました[1]。ヤコブとヨハネは「この仕打ちを黙って見過ごせるか! 復讐あるのみ!!」と怒ったのです。
しかしこの時イエスは、二人を戒められました。天から火を呼ぶことなど、簡単におできになったはずですが。復讐をお許しになりませんでした。この時の二人には、怒りを収めることは難しかったでしょう。しかし彼らはやがて変えられていきます。主のよみがえりののち、ヨハネはサマリヤのクリスチャンたちのために、サマリヤに働きに行くのです(使徒8章)。
☆あなたがたの名が天に書きしるされていることを喜びなさい。(ルカ 10:19)

さてイエスは、おおぜいに増えていた弟子たちの中から七十人を選び、これから行く予定の町々に、二人ずつお遣わしになりました。
さあ、行きなさい。…
そして、その町にいる病人をいやしてやり、
『神の国はあなたがたに近づいた』と言いなさい。(口語訳聖書 ルカ 10:3,9)
何も持たずに行きなさい。働く者が報いを受けるのは当然だから。どの家に入っても、まずその家の平安を祈りなさい。受け入れてくれたら、その家に泊まり、出される物を飲み食いしなさい。あちこちの家を渡り歩かないように。入った家が平安にふさわしくなければ、祈った平安はあなたがたに返ってくる。あなたがたを受け入れない町からは、決別を宣言して出てきなさい。その町は、神がさばかれる…
宣教を終えると、七十人は喜んで戻って来ました。先生! あなたの御名を使うと、悪霊でさえ私たちに服従します! …もちろんイエスには、そんなことはわかっていました。なぜなら、彼らに敵に打ち勝つ権威を授けたのはご自分だから。ただ、彼らが主に命じられた通りの働きをした時、悪霊が叩きのめされたのは確かです。彼らが宣教していた間、サタンがいなずまのように天から落ちるのを、イエスは見ておられます。私たちも同じように、イエスさまのお言葉通りに行動すれば、それはサタンに強烈なダメージを与えます。が、サタンに勝った!と喜んではいけません。イエスはおっしゃいます。「ただ、あなたがたの名が天に書きしるされていることを喜びなさい。」
参考
[1] ユダヤ人とサマリヤ人の仲違いっぷりは、徹底していたようです。口もきかない。近づかない。ユダヤ人はサマリヤの土地に足を踏み入れることさえしませんでした。ガリラヤ地方からエルサレムに上るにはサマリヤを突っ切って行くのが最短距離ですが、それをしたくないがために、わざわざヨルダン川を渡り、川沿いを南下する遠回りルートをとったほどでした。
ぬりえ
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