(3) 幼子イエス

洗礼者ヨハネの誕生のあと半年ほどして、イエスさまはお生まれになりました。ベツレヘムでのその夜のできごとは、クリスマスにお話ししましょう。

☆夫のヨセフは正しい人であって(マタイ 1:19)

結婚もしないうちに、赤ちゃんを身ごもったマリヤ。でも彼女は、石打ちの刑にあうこともなく、無事出産することができたわけです。イエスさまの生涯は、母のおなかに宿った時からすでに危険に満ちていました。「新しいユダヤの王」があらわれたら、地位がおびやかされる人はおおぜいいたからです。そして彼らは、貧しい若夫婦と赤ちゃんなど簡単に抹殺できる力を持っていました。そのような危険を、神さまはひとつずつ取りのぞいていかれたのです。

誕生から大人になるまでのイエスさまを守るために用いられた人がいます。地上でのイエスの父となったヨセフです。彼はまさに、イエスの成長を守り支えるために選ばれた人だったと言えるでしょう。

思い悩むヨセフ
ヨセフは 結婚前にマリヤがみごもったことを知った

まだ婚約中のマリヤが子を宿したと知って、彼はたいへん悩むのですが、そんな夜、主の使いが夢であらわれて彼に告げました。

ダビデの子ヨセフよ、
心配しないでマリヤを妻として迎えるがよい。
その胎内に宿っているものは聖霊によるのである。
彼女は男の子を産むであろう。
その名をイエスと名づけなさい。

(口語訳聖書 マタイ 1:20–21)

目覚めたヨセフは、もう迷うことなくマリヤと結婚し、出産まで胎の子にさえ敬意をあらわし、もちろん命じられたとおりにイエスと名づけています。

ダビデの子ヨセフ
主の使いがヨセフの夢に現れて言いました

☆ヨセフは立って、夜のうちに幼子とその母を連れ…(マタイ 2:14)

次の危機は、幼子が1歳をすぎた頃にやってきました。大王ヘロデにイエスの誕生を知られたのです。

ヨセフと家族は、まだベツレヘムで暮らしていました。神さまはそこに、ふたたび使いを送りました。東から来た博士たちが一家を訪れ、贈り物をおいて帰って行ったあと(おそらくその夜)ヨセフはまた夢を見たのです。主の使いに「エジプトへ逃げよ。ヘロデがこの子を捜し出して殺そうとしている」と告げられる夢。彼は飛び起きると、その夜のうちに妻と子供をつれてエジプトへ逃げ、ヘロデが死ぬまでとどまりました。

エジプトへの逃避行
イエスとマリヤを連れ エジプトへ脱出するヨセフ

帰る時も、やはり夢で使いがあらわれ「ヘロデは死んだ。イスラエルに戻りなさい」。彼はこの時も、目覚めるとすぐに行動を起こしています。しかし、帰ろうとしたユダヤ地方は、ヘロデの息子が支配していました。

《二筆で書けるイスラエルの地図》

map-ヘロデの息子たちの支配地域
ヘロデの息子たちが治めていた地域

ヨセフが心配していると、また夢のお告げがありました。彼はお告げのとおり遠いナザレまで戻り、妻と子供を守るべく、ひっそりと引きこもったのでした。

降誕と同じく、エジプト逃亡もナザレへの帰還も、聖書に預言されていたことです。貧しい一家が国外で逃亡生活をするための費用も、博士たちからの贈り物という形で、神さまが用意なさったのでしょう。すべてが神の御手のうちにあったのだとしても、これだけの危機から幼いイエスを守り抜くことができたのは、ヨセフの決断力と行動力、そしてなにより彼の、一瞬たりとも迷うことのない信仰があったからです。イエスが自分の子ではないということは誰よりも彼自身がよく知っていたわけですから、彼のこの生き方は、神への絶対的な信頼がなければありえません。マリヤは何かことが起きると、あれこれと考えこむタイプだったようですが、こういうすばやい判断力で導く夫を与えられたのも、きっと神さまのご配慮でしょうね。

ぬりえ

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