イエスさまが、指導者であるパリサイ人たちと対決することを避けて、ユダヤを離れ、ガリラヤに向かわれた頃。バプテスマのヨハネにひどいできごとが起こりました。
☆ヘロデは、…ヨハネを捕えて縛り、牢に入れた(マタイ 14:3)
当時イスラエルはローマ帝国に支配されていましたが、それぞれの地方は、ユダヤのヘロデ大王(東方の博士たちが謁見した王様)の息子たちが治めていました。
その中の一人ヘロデ(ヘロデ・アンテパス)がヨハネを逮捕し、牢に入れてしまったのです。理由は勝手なもの。ヘロデの結婚は法律違反だとヨハネが非難したのが、気に食わないというのです。
そもそもヘロデ大王の一族は、家族関係がめちゃくちゃでした。息子たちと言っても、母親は全員ちがう人。しかも大王は、王座をうばわれることを恐れるあまり、実の子供さえ次々に殺していったのです。ヘロデ・アンテパスは、なんとか生き残れた幸運な息子でした。でもそんな恐ろしい環境で育ってきた彼には、正しい政治ができませんでした。結婚以外にもいろいろ悪いことをする国主だったようで、それらすべてをヨハネに責められていました。
人を恐れることなく発言するヨハネにくらべて、大きな権力を持っているはずのヘロデは、ずいぶん器の小さい人でした。同じくヨハネに責められて腹を立てたヘロデの妻(ヘロデヤ)が「ヨハネなんか死刑にしちゃえばいい!」と言うのに、ヘロデは何もできなかったのです。ヨハネを聖なる預言者だと信じている群衆がこわかったからです。おまけに、ヘロデ自身もヨハネの教えを聞けることを実は喜んでいて、そんな人を殺したら何が起きるか…とおびえていました。
☆あの方は盛んになり私は衰えなければなりません(ヨハネ 3:30)
ヘロデに投獄される少し前。ヨハネはヨルダンの川岸でやって来る人々にバプテスマを授けていました。
そこに、弟子たちが来てこう言ったのです。「先生が証しなさったあの方が、バプテスマを授けておられます。そしてみな、あの方のほうへ行ってしまいます!」
あの方とは、イエスさまのことです。
弟子たちは、自分の先生の人気が落ちてイエスさまの人気が上がっていくのが、くやしかったのでしょう。しかしヨハネは、このように答えました。
『わたしはキリストではなく、
そのかたよりも先につかわされた者である』と言ったことを
あかししてくれるのは、あなたがた自身である。
…彼は必ず栄え、わたしは衰える」(口語訳聖書 ヨハネ 3:28&30)
彼は何も恐れていませんでした。そして、人々をキリストに導くために、ただひたすら働いていたのでした。
残念ながら、私たちはみなヘロデとたいして変わらない弱い者です。人目を気にする。責められれば恨む。あんなやつ死んじゃえ!と思ってしまい、こんな自分にはバチが当たるのではないかとおびえる。そんな情けない私たちを救うために、イエスさまは命をかけてくださいました。ヨハネのように主イエスを見上げて生きれば、恐れはきっと取り去っていただけます。必要な勇気を与えられ、自分の使命を果たすことができるようになるのです。