(7) 士師記③「それは落とし穴となった」

主の使いの言葉をなかなか信じられず、何度も確かめてから、やっと神の命令に応えられた小心者ギデオン。イスラエルを勝利に導いても、彼は謙遜でした。
…が。

☆主があなたがたを治められます(士師記 8:23)

イスラエルの民は勝利に沸きました。ミデヤンの大軍を我らは打ち破ったのだ! ギデオンばんざい! 我らのヒーロー、我らの王! ギデオンさま〜〜〜… ヤンヤ ヤンヤ。

そして人々はギデオンに言いました。ギデオンさま、私たちのリーダーになってください。あなたが私たちを治めてください。あなたから始まって、あなたの息子さんも、お孫さんも、ご一族代々ずっと!

しかしギデオンは、神の前にへりくだって答えました。
「私はあなたがたを治めません。また、私の息子もあなたがたを治めません。主があなたがたを治められます。」
ギデオンは、イスラエルを守り導いたのは自分ではなく、神さまのお恵みなのだとよくわかっていたのですね。

☆分捕り物の耳輪を私に下さい(士師記 8:24)

ところが。「主が治められます」と言った、そのすぐ次に、ギデオンはこう続けたのです。ひとつお願いしたい。敵から奪い取ってきた金の耳輪を私にください…

敵の部族は、ゴールドのイヤリング[1]をつける習俗を持っていました。イスラエル軍は、それらをたくさんぶんどってきていたのです。人々は、どうぞどうぞと金の耳輪をどっさり差し出しました。目方は一千七百シェケル=約20㎏もありました。そのほかにも、いろいろな飾り物類や、ミデヤンの王たちが着ていた豪華な服などが差し出されました。

ギデオンはそれらを使ってエポデ[2]を作り、自分の出身地であるオフラという町に置きました。えらそうに王様として君臨することは望まなかったギデオンでしたが、やはり勝利のしるしを記念に残しておきたいと思ったのでしょうか。

ギデオンがエポデを作って置いたという記述のすぐあとに、士師記の著者は書いています。

イスラエルは皆それを慕って姦淫をおこなった。
それはギデオンとその家にとって、わなとなった。

(口語訳聖書 士師記 8:27)

ギデオンのエポデ
ギデオンの作ったエポデの前で イスラエルは乱れていった

淫行を行なった。つまり民は、神のくださったおきてから目をそらしてしまい、神に示された正しいことではなく、まちがったこと、おぞましい行いをするようになったというのです。そしてそれが、ギデオンとその一族にとって、大きな落とし穴となった…

“落とし穴となった”という表現は、聖書に何回か出てきます。それは、気づかないうちにいつのまにか深く掘られ、普通に歩いているつもりで一歩を踏み出した先に待ち受けていて、人を飲み込むのです。私たちは神さまに守られています。信仰によって歩めば、勝利を得させていただくこともあるでしょう。が、油断してはなりません。喜びに気持ちが高ぶる時こそ、静かに祈ることが大切です。

ギデオンの支配した40年間、イスラエルは平和でした。彼は長寿を全うしました。しかし彼の死後、悲劇は起こりました。彼はおおぜいの妻を持ったため、息子が70人もいました。そのうちの一人が、国を我がものにしたいという欲望にかられ、残りの兄弟を皆殺しにしたのです。国は乱れ、民はあっと言う間にバアル(異教の神)信仰に染まっていきました。

《[Canaanite, baal](カナン人 バアル神)で画像検索》

参考

[1] 月齢の低い生徒のためには、ゴールドのイヤリングの実物を見せた方が良いかもしれません。
[2] 祭司アロンのエポデ(大祭司が服の上につける胸当て。イスラエル12部族を表す12種の宝石が埋め込まれている)→ 「会見の天幕」

ぬりえ

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