(7) 士師記①「目ざめよ デボラ」

モーセのあとを継いだヨシュアも死ぬと、イスラエルに混乱の時代が訪れました。民全体をまとめあげるリーダーがあらわれなかったのです。170年ほどものあいだ。

☆彼女は …なつめやしの木の下にいつもすわっていた(士師記 4:5)

敵や異教と戦いながらカナンの地に住みついていかなければならない大事な時期に、神さまがなぜモーセのような偉大なリーダーをお与えにならなかったのか、本当のところはわかりません。まことの神だけにたよるリーダーが上に立たないと、国がどれほど不安定になるものか、民に知らしめようとなさっていたのかもしれません。

いずれにしてもその間(BC1220−1050頃)、民全体を率いるほどの力はないけれど、いくつかの部族をまとめる立場のリーダー「さばきつかさ(士師)」が、かわるがわる12人立てられました。そのうち6人については、細かいことは書かれていません。詳しく記録されている残りの6人のうち、1人は女性でした。

女預言者デボラ
女預言者デボラは いつもなつめやしの木の下にいた

彼女の名前はデボラ(エフライム族)。リーダーと言っても、結婚して家庭もあったので、軍隊を指揮して駆け回っていたわけではありません。山の上にある「デボラのなつめやし」と呼ばれる木の下にいつもすわり、女預言者として、山に上って来る民をさばいていました。

《[date palm tree](なつめやし)で画像検索》

☆私は必ずあなたといっしょに行きます(士師記 4:9)

そのデボラに、ある日神のことばがくだりました。彼女は使いを送って、指揮官バラク(ナフタリ族)を呼び寄せると、彼に告げました。ナフタリ族とゼブルン族から1万の兵を取り、タボル山に進軍せよ! 山のふもとのキション川で、神はあなたの手に敵将シセラとその大軍を渡される!…

ところがバラクはデボラにこう答えました。
「もしあなたが私といっしょに行ってくださるなら、行きましょう。いっしょに行ってくださらないなら、行きません。」

バラクは、たった1万の兵で敵の大軍[1]に立ち向かうのが不安だったのでしょうか。実際彼はこのあとデボラから、シセラ本人を倒すという栄誉を得るのはあなたではない…と予告されています。“なぜなら主は、シセラをひとりの女の手に売り渡されるから”… 

目ざめよ デボラ
デボラは立ち上がると バラクと共に戦いに出て行った

バラクと軍に自分がついていくのが必要であることを、デボラは神さまから知らされていたようです。彼女の返事には迷いがありませんでした。

デボラは言った、
「必ずあなたと一緒に行きます。」

(口語訳聖書 士師記 4:9)

彼女はすぐに立ち上がると、山を下りました。それから1万の兵を引き連れたバラクとともに、目的地タボル山まで80㎞もの旅をしました。

《[Mount Tabor](タボル山) [Kishon River](キション川)で画像検索》

戦闘は、デボラの預言どおりの展開になりました[2]。イスラエル軍は勝利し、敵将シセラは、味方だと思って逃げ込んだ家(天幕)で裏切りにあい、その家の妻に暗殺されたのでした。

リーダーになるというのは大変な仕事です。できればなりたくないという人は多いでしょう。でも、もしあなたがリーダーとして選ばれたなら、それは神さまのみこころとして“受けて立つ”ことです。たとえあなたが女で、従うのが男であっても、受けて立つ! そして「みんなを自分に従わせよう」ではなく、「まず自分が神さまのお導きに従おう」と決意するのです。そうすれば、あとのことはすべて神さまが教えてくださいます。

参考

[1] 当時のカナンの王ヤビンに仕えていた将軍シセラは「鉄の戦車九百両」を持っていた(士師記 4:3)とあります。それに比べれば、イスラエルの軍事力は相当貧弱なものだったと考えられます。

[2] タボル山は、頂上部は平たく広く、兵が集結するのに都合の良い形状です。しかし、ふもとから山頂までは急斜面で、敵軍にとっては登って行って攻撃するには不利な地形でした。イスラエル軍は山麓まで駆け下りて総攻撃をしかけました。その時、豪雨にでも見舞われたのか、キション川が洪水を起こしたのです。水が溢れると川岸は泥土化してしまう土地柄で、鉄の戦車には致命的だったようです。おそらく泥に車輪を取られて、身動きできなくなったのでしょう。将軍シセラでさえも「戦車から飛び降り、徒歩で逃げた」(士師記 4:15)とあります。

ぬりえ

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