(67) 洗足

過越の祭りまであと二日。油断せず、注意深くいなさいと繰り返されるイエスは、何か大きなことをしようとしておられるのか…と、弟子たちは感じていたでしょうか。

☆イスカリオテと呼ばれるユダに、サタンがはいった。(ルカ 22:3)

しかしイエスは、弟子たちに語り終えられると、やはり最後にこのようにおっしゃるのです。過越の祭りが来ると私は十字架につけられるために引き渡されます…。民衆を率いてローマ帝国からの独立を勝ち取る戦いに臨むのだとしても、十字架って… どういうことだ? 弟子たちは混乱したことでしょう。十字架刑とは、単に死刑だというだけでなく、“見せしめ”の刑です。こいつは極悪人だ、革命に失敗した、あわれな敗者だ!と人々の前にさらされるって…。先生にそんなことが起きるはずないじゃないか。

ところが。十二使徒の中でただ一人、それを願った者がいました。イスカリオテと呼ばれるユダに「サタンがはいった」と福音書記者ルカは記しています。ユダは、もちろん誰にも内緒で、祭司長たちの所へ出かけていきました。祭司長や長老、律法学者たちは、カヤパという大祭司の家の庭に集まり、相談しているところでした。どうしたらイエスをだまして捕え、殺すことができるだろうか… 祭りの間はまずいだろう… この大群衆が怒り狂って暴動でも起こしたらどうするんだ!?

そこにユダが現れて言ったのです。「彼をあなたがたに売ったら、いくらくれますか?」祭司長たちは、大喜びで銀貨三十枚[1]をユダに支払いました。この時からユダは、群衆のいない間にイエスを引き渡そうと、機会を探り始めたのでした…

☆この中でだれが一番偉いだろうか(ルカ 22:24)

洗足
イエスは自ら「人に仕える姿勢」をお示しになりました

さて、過越の祭りの第一日。過越の食事はどこでしましょうか?と問う弟子たちに、イエスは不思議なことをおっしゃいます。都に入ると、水がめを運ぶ男に会うから、ついて行きなさい。彼の入って行く家の主人に「先生が食事をする客間はどこか」と聞くと、席の整った二階の大広間に通してくれるだろう…。先生がご自分で部屋の手配なんてしているヒマはなかったはずなのに。しかし弟子たちが出かけてみると、まさにそのとおりのことが起きたのでした。

夕方になり、イエスと弟子たちは過越の晩餐を始められました。そこで弟子たちは相変わらず「俺たちの中で一番偉いのは誰だ!?」とやっています。それを見たイエスは、席を立ち、たらいに水を入れると、なんと自ら弟子たちの足を洗い始められたのです。客の足を洗うのは奴隷の仕事です。弟子たちはアワアワしてしまったようです。ペテロは、先生が私の足などを洗うなんて… おやめください!と頼みますが、イエスはやめません。弟子たち全員の足を洗い終えると再び席に着き、彼らにおっしゃいました。

「主であり、また教師であるわたしが、
あなたがたの足を洗ったからには、
あなたがたもまた、互に足を洗い合うべきである。」

(口語訳聖書 ヨハネ 13:14)

人よりも上に立とうとせず、お互いに仕え合いなさい。今私がやってみせたように。そうする時、あなたがたは祝福されるのです…。私たちも同じように、人に仕えて働きましょう。その報いは、神さまからいただけますからね。

参考

[1] 「銀貨三十枚」は奴隷一人を買う値段でした。

ぬりえ

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